1935年の短編小説「Pygmalion’s Spectacles」にゴーグル型のVRシステムが登場して以来、VR（仮想現実）という言葉が世に出て、実に８５年の歳月が流れたわけだ。

当初はSFの世界で使われていた言葉ではあるが、実際の科学者もその実現に向けて様々な手法を生み出してきている。

そんな中で描かれるラノベの中のVRだが、どうやらその仮想空間はデジタルで生み出されたものとは異なり、高度に発達しすぎたAIによるまさに異世界と呼んでいい世界が広がっている。

それはあたかも二つの世界を繋ぐシステムとして形作られたVRが、そこにある。

想像力というものは果てしない欲求に背を押されて、どこまでも無限の広がりを魅せる力である。

宇宙の深淵を想像した人が、宇宙の始まりについて説を唱え、それを実証しようと多くの科学者が日夜研鑽を続けている現実の世界があるかと思えば、もっとシンプルに想像したままの世界を描き出す作家という職業の者もいる。

そんな我々の住むこの世界そのものが仮想現実だと言い出す人までいるくらいに、VRという言葉は誰にとっても身近なものになりつつある。

しかしこの物語に代表される、ライトノベルの中でのVRは、頭からポスっとかぶる装置一つで、感覚も味覚もすべてが接続された異世界へと至れる。

セカンド・ライフでは今一つの盛り上がりでしかなかった二つ目の生きる世界が、生き生きとした物語の中の世界としてそこにある。

……とまあ、こんな感じでごまかせたなら嬉しい限りである。

– 用務員 ４５歳 男