おすすめ 小説 賢者の孫

賢者の孫 | 作者: 吉岡剛

読後感想

賢者の孫の原作を読んで感想を書けとのご依頼が来た。 しかし、ライトノベル作品は あまり好きではないので どうしようかと悩んでいたところに、 テレビでアニメ放映がされていると 話を聞いた。

依頼を受けるかどうか その判断材料の為に と思って アニメ作品を見ることになったのだが、 その頃の私は いろいろと 災難に見舞われており、 せっかく用意してもらった DVD を なかなか見られないまま 時が過ぎてしまった。

そして、あれから三年。 月日が経つのは早いものだ。

その間に私は 引っ越しを2回繰り返し、 そうして 離婚もし、 今は独りとなった。 仕事は 変わらずに 続けてはいるが、 何分 引っ越す前に 愛用していた 仕事道具が いつまでたっても見つからない。業者に頼んで片付けてもらった際に もっとちゃんと 伝えておけばよかった。

そうして 出てきた DVD が、 賢者の孫だった。

2019年に 販売された パッケージの表には 主人公らしい 男女の姿が 描かれている。 前の方に 若い男女、 そのすぐ後ろに 少し 年をとった 同じような男女だ。

久しぶりに見た そのパッケージに つい昔を思い出して、 そういえば当時 この作品の 紹介文をと 依頼をされていたことも 同時に思い出した。 結局、最終的にはお断りをしてしまった 依頼ではあったが、 何かの縁と 手渡されたこの作品は、 子供たちが喜んだのを覚えている。

なにもかもが、 懐かしく思えて つい 仕事道具を探す手を止めて DVDを 箱から出していた。

銀塩の 顔が映るかと思うほどの 確かな遠い日を 思い返させる 円盤。 表面には いろいろと 描かれている。

準備はできた。次は……

テレビは既に設置済みなので デッキがどこにあるのかを探す。すると、 どういうわけだか キッチンに置かれており、 その上に 電子レンジが 載っている。

いったい何と勘違いされて ここに設置してくれたのだろうか。 まあ、細かいことはどうでもいい。 私は その電子レンジを 動かすために、 その上に載っていた こまごまとした 台所用品の 箱を 移動し、 そうしてようやく DVDのデッキを 動かすことになる。

ここで、少しばかりトラブルが発生した。 DVDデッキを持ち上げて リビングに移動するために 振り返ったところで、 デッキから延びる 電源コードと LANケーブルだろうか、 その二つが 巻き込み事故を起こして 食器棚が 前のめりに ころげた。

中にはまだ何も入っていないだろう、と思って 倒れた食器棚を 起こそうと 手で持ち上げてみたら、 その時になって 中に置かれていた 食器が 一度に床まで 滑り落ちていく。

まったくもって、 酷い音だった。

夫婦茶碗や湯呑が割れたのは、まあいい。 もう、昔の物だ。 それよりも 息子が 小学校に上がって 学校で作ってきてくれた コーヒーカップのようなものが 取っ手が取れてしまった。 これでは 湯呑としてしか 使いようがない。 娘の手作りの 丸皿のような 大きな ソーサーも 一緒に 欠けてしまっている。

そのことが少しだけ 悲しくなり 私は その場で 暫く 泣いた。

それから暫くして、再び DVDデッキを持ち、 それを 設置済の テレビの隣に 置く。

そうして、一枚目の DVD を入れると、物語が すぐに はじまりだした。 何とも言えぬ 明るさに満ちた 人が 描かれていて、 夕暮れに差し掛かり 室内灯をまだつけていない この部屋に パッと明るさが増す。

どうしたことか……

その画面を見つめながら、テレビの正面に 胡坐をかいて座っていると、 なんだか ずっと昔の 20代初めの頃を 思い出してしまった。

物語が進み 主人公が 賢者に 拾われた時の話になると、 つい再び 目と鼻から おかしな水が出てくる。

つまるところ、ストーリー的には いろいろと ありえそうもない 話なのだが、 なし に 無し が掛かると 何とも言えず 面白そうな流れができる。 そこに更にありえそうもない設定が入り込み、 気が付けば テレビに向かって突っ込んでしまっていた。

そうして、一晩かけて 見た。

賢者 の 孫 | 作者: 吉岡剛

結論から言おう。

この作品は、 アニメ、 漫画、 そして原作小説 それとWEB公開版 とそれぞれに 違う味があり 面白い。

中でも、一番に読んでもらいたいのは WEB公開版だろうか。 作者の書きたかった内容が これでもかと描き込まれている。 それでいて、無料で読める。

その上で書籍版を買い、 かつ コミックを揃えてみる。 すると それぞれに 微妙に感じられる差異が、 世界には パラレルな広がりを持つ 異世界が ありそうだなと 感じさせてくれる。

つまりこれは、 そんな 作品だ。

賢 者 の 孫

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