おすすめ 小説 魔王様の街づくり

大魔王様の街づくり | 作者: 月夜 涙

読後感想

魔王とは何か?について、また新たな説が出てきたな という感じ。 例えば日本の安土桃山時代、 各地に存在した豪族や武家など 支配欲の強い者が 暴力でもって 人々を”支配” していた時代、 農民や商人のことを思って 街づくりを していた名君たちを 思い浮かべる。 武士や豪族なんて パンピーから見たら、どれもこれもが魔物や魔王みたいに思えるだろう。

そうやって考えると 魔物や 魔王 というのは 随分と人の身近にいるものだなと 思った。 身近といったってお隣さんやご近所さんとかではなく、 今ふうに言えば テレビでよく見かける方だったり、 ネットで人気のユーチューバー、 近隣のお金持ちだったりも含まれることがあるかもしれない。

ここで言う魔物、魔王の定義とは、 人から何かを奪うことで 生きていく糧を得ている 生き物のことだ。 自分たちで 生産する という ことができず、 人類が吐き出す 強い感情を あてにして 日々を暮らしている。

通常の魔王たちは その人類の感情を ダンジョン内で 人類を魔物に襲わせて得られる 恐怖 激情 無念 で賄おうとしている。 時に 宝箱により 歓喜 欲望 なども収集して ダンジョンポイントと呼ばれる糧に変える。

しかし創造の魔王であるプロケルは その強い感情を 人の 喜びで 賄おうと決めた。 生み出した 魔物たちが 人類と戦うことで 傷つくのを憂いての決断ではあるが、 やがてその決断が プロケルを 窮地に追い込み、 そうして その窮地から 救ってもくれることとなる。

他の魔王たちが 人間を呼び込むために 多くのダンジョンポイントを ダンジョン内の様々なギミック、 より強い 魔物の召喚に 充てるのに対し、 プロケルは 人々が 幸福に暮らすことによる 永続的な 感情を 得られるのである。 そうしたところが 実に心地よい 物語となっている。

この作品は それ以外にも いくつか見どころがある。 まず、 プロケルの生い立ちについてだが、 どういうわけか プロケルは 生まれてすぐに 使った 魔力により 現代の私たちの社会にある 銃火器を錬成することに成功する。

なぜ そんなものを創れるのか。 また どうして 容易くそうした銃火器を 用いて戦うことができるのか。

魔王の 育成システムについても 興味深い点がある。 プロケルは最初、 生まれてすぐの頃に 親代わりとなる 獣の魔王 に育てられる。 とはいえ 既に十分な成体として 生れ落ちており、 獣の魔王は いくつかの魔王として知っておくべきことを 教えて後、 すぐに 自分の用で 出かけることとなる。

魔王たちの 生き方 や 嗜好、 他にも 興味深い点を探しながら読み進めれば 気になる点は いくつも出てくる。

最後のページまで読み進んで その時に感じたものは 不思議な 気持ちだった。 魔王という存在について、 他の作者さんが描く作品では 善に対する 絶対的な悪、 我欲の為に暴虐非道の限りを尽くす、 気に入らなければ 神々に対しても 容易に牙を向ける、 そうした存在だったのが、 この作品を読んで以降は どうしたわけか それほど疎ましいものではないと思うようになってきている。

現実には 魔王と呼ぶような存在も 魔物と呼ばれる存在も この世には 在り得ない。 しかし似たような者たちなら 歴史にいくらでも いた。 後の世では英雄として語り継がれる 歴史的人物であっても 当時 その者と 同世代を生きた者たちからは 魔王と恐れられた者だっている。 そうした人たちの一人一人についても この作品を読後に 少しだけ興味がわいてきている。

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