本作『仮面は二枚被れ』（書籍化タイトル『クエスト：プレイヤーを大虐殺してください VRMMOの運営から俺が特別に依頼されたこと』）は、百瀬十河先生による、VRMMOの世界を舞台にした異色の暗躍ファンタジー小説です。Web小説サイト「カクヨム」で連載されており、その斬新な設定と先の読めない展開で多くの読者を惹きつけています。

物語の舞台は、最新の技術を惜しみなく注ぎ込んだフルダイブ型VRMMO『リーエン＝オンライン』。このゲームには、自分で選び育てる通常の職業とは別に、運営からランダムで与えられる「生まれつきの職業」【ネイチャー】があり、それは他のプレイヤーに「正体を知られてはならない」という特徴を持つ【仮面システム】として機能します。

主人公・シオンは、このゲームのプレイヤーの一人。しかし、ある日彼に与えられたのは、他のプレイヤーとは一線を画す特別な依頼でした。それは、ゲームの運営から直々に「黒の盟主となって、プレイヤーを大虐殺してください」という、常識破りのミッション。特別に「3つ目の職業」として「黒の盟主」（闇属性の頂点）を与えられたシオンは、リーエンの世界に混沌をもたらす存在となることを期待されます。さらに、彼ら盟主には、一般プレイヤーが一つしか持たないネイチャーが「二つ」与えられるという特権も与えられていました。

果たしてシオンは運営の意図通りに動くのか？それとも、自身の目的のために「普通のプレイヤー」という仮面を被りながら、裏で暗躍し、ゲームの世界と運営が隠す秘密を暴いていくのか――。いわゆる「敵サイド」に回った主人公が、知略と策略でゲームを動かす、一味違ったVRMMOファンタジーがここに開幕します。

『仮面は二枚被れ』の最大の魅力は、主人公が抱える「二枚の仮面」から生まれる緻密な心理戦と、先の読めない暗躍にあります。

• 「仮面システム」による戦略的な二面性: プレイヤーに与えられる「生まれつきの職業」である【ネイチャー】、そして盟主のみに与えられる「二つのネイチャー」や「黒の盟主」としての役割が、物語に深みを与えています。主人公シオンは、このシステムを利用し、表向きは目立たない普通のプレイヤーとして振る舞いながら、裏では「黒の盟主」としての顔を持つことで、周囲を欺き、自身の目的を達成しようとします。この二面性が、物語に緊張感と面白さをもたらします。
• 運営からの「大虐殺」依頼という異色なミッション: 通常、プレイヤーはゲームの世界を楽しむ存在ですが、本作の主人公は「運営」から「プレイヤーを大虐殺する」という、常識外れの依頼を受けます。この異色な導入が、物語にダークな側面と、プレイヤー対運営、そしてプレイヤー対プレイヤーの構図を生み出し、予測不能な展開を約束します。
• 主人公シオンのクレバーな暗躍: シオンは、単に力でねじ伏せるだけでなく、頭脳を駆使して状況を有利に進めていくタイプです。緻密な計画を立て、伏線を張り巡らせ、他のプレイヤーや運営の思惑を読み解きながら暗躍する姿は、読者に知的な面白さを提供します。彼の思惑通りに事が進んでいく様は、痛快です。
• 壮大な世界観と徐々に明かされる謎: 『リーエン＝オンライン』というVRMMOの世界は、中世の世界観と機械文明が融合した非常に練り込まれた設定が施されています。ゲーム内の勢力争い、隠された秘密、そして運営の真の目的など、物語が進むにつれて徐々に解明されていく謎が、読者の好奇心を刺激し、作品への没入感を高めます。
• 「敵サイド」主人公の新たな魅力: 善悪の概念を超え、自身の信念に基づいて行動する主人公の姿は、一般的な「正義のヒーロー」とは一線を画します。彼の行動が、結果的にゲームの世界にどのような影響を与えるのか、そして彼自身の思惑はどこにあるのか、その動向から目が離せません。