穏人の見る風景

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平和の景色

10月間近な頃になって、ようやく日本へと帰り着いた。とにかく暑い。それはそうだ、昨日の夜まではほとんど北極にいたんだから。アメリカだけかと思ったら、車で国境を越えてカナダへと移動し、タカツキさんは相変わらず身振り手振りのコミュニケーションを駆使して現地の人たちから何かの情報を仕入れようとしていた。事務の人は所長と一緒で同じように何かを探して歩きまわっていたらしい。

「砂ってどう言う?ほら、通訳!早く!!」

サンドくらい覚えろよって内心思いながらスマホを駆使してつづりを見せる。現地の人はみんな優しく応えてくれて、これもこの人の才能なのかななんて思ったりもした。

日本に戻ってそのままみんなで、山梨の山あいにある一件の蕎麦屋に向かった。所長も事務さんも店主の人と顔見知りらしく、ずいぶんと親し気に話をしていた。タカツキさんはその様子を見ながら、こんなことを言う。

「あの店主さんさ、いくつに見える?ずいぶんと若く見えるだろう。俺はジャンさんにはもっと渋いおじさんの見た目でいて欲しいんだけど、何度言ってもあの格好なんだ。イチコさんはいいんだけどな、20代のまんまで。けどな、ジャンさん俺よりずっと先輩なんだからダンディなロマンスグレーとかになって欲しいよな。」

まったくもって何を言ってるんだかわけがわからない。蕎麦の出来はそれこそ特上と言ってもいいくらいで、のど越し、味、香りはこれまで食べたことのあるコンビニの蕎麦とは比べ物にならないものだった。天ぷらもついてきたんだが、見た目からはよくわからない山菜?のそれは一口で全身に総毛立つ美味しさ。なのにタカツキさんだけは箸もつけない。

「美味いのはヒロに教えてもらったことがあるから知ってる。」

それだけ言って、タカツキさんは店の外へと出ていった。

投稿日: 2018年9月8日Danna

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